『生きがいについて』
弱者である病める者を介護し、相談にのり、支持するという看護の本質を、自らの心の深いところにもち続けた著者にして初めて記しえた本ではないでしょうか。
別の文章だが、医療の場では弱者に対する強者の優越感が極めて起こりやすく、しかも強者自身が案外気づいていないことが多いことを指摘し、これを避ける唯一の可能な道は「自分もまた病みうる者だ」「自分もまた死にうる者だ」ということを、絶えず念頭においておくことであると述べています。
現代文明と生きがいの問題は、今後ますます大きく私たちにのしかかってくるでしょう。
特に、本の最後に挙げられている植物状態になった人や精神障害をもつ人たちの生きがいという「残された問題」は、老齢化社会での老人の生きがいという問題とともに、これから私たちが取り組んでいかねばならない大きな課題です。
20年前に出版されたこの本は、こうした課題を考える手がかりを私たちに確実に与えてくれるという意味でも新しさを失っていない。